今回は、8月上旬から中旬までの途上国を中心とした主な国際的なニュースと各国の動向を取り上げたいと思います!今回は、アフガンの政権崩壊やIPCCなど世界的に大きな影響を及ぼす出来事がたくさんありました。
こんな方におすすめ!
- 市場に関係する主要な世界のニュースを振り返りたい
- 世界的なマクロ経済に関する最新の情報を知りたい
- 新興国市場や各国の動向を確認したい
- 主要な新興国ETFの指標を確認したい
国際政治・世界経済の主な動向
アフガニスタン タリバンが首都カブールを制圧しガニ政権は崩壊
8 月 15 日、反政府勢力タリバンがアフガニスタン全土を制圧後に首都カブール近郊まで進軍しましたが、アフガニスタン政府と政権移譲交渉を実施中にガニ大統領は国外 退避(後日 UAE に移動したと判明しました)。
その後タリバンが大統領府に入り、政権が事実 上崩壊しました。
米国バイデン政権が宣言した撤退完了期限(9 月 11 日)を目前に米軍 撤退が進む中、7 月以降タリバンはアフガニスタン各州の制圧を進め、8 月に入りそ のペースは加速していました。
タリバンのカブール制圧後、バイデン大統領は自国民等の 退避支援等のため 48 時間以内に 6,000 名の軍派遣などを発表(その後、更に 1,000 名増派)、また米中央軍マッケンジー司令官はドーハでタリバン側と会談して退避の 安全確保に合意したとの報道もありました。
また、即日、日本を含む 60 ヵ国以上が、退避を望む外国人・アフガニスタン国民の安全な出国許容を求める共同声明を発表しました。
IPCCが新たな温暖化予測を発表 国連事務総長は「人類への赤信号」と警鐘
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第 6 次評価報告書の最初の報告書である「第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)」を公表しました。
今次報告書では「人間の活動が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」 もので「広範囲にわたる急速な変化が、大気、海洋、雪氷圏及び生物圏に起きている」 と、従来よりも踏み込んだ評価をしました。
将来の気温上昇 見通しについては 5 つのシナリオを提示し、今世紀末には、産業革命前と比較して最低 で約 1.4°C、最高で約 4.4°Cの上昇を予測し、2040 年までに+1.5°Cに到 達する可能性が高いと述べられています。
国連のグテーレス事務総長は、本報告を「人類への赤信号」 とした上で、本年 11 月に予定される COP26 に向けて各国政府・ステークホルダー の一層の対応を促しました。
IPCCの内容については、国立環境研究所がとても分かりやすい解説動画をアップしていたので、ぜひこちらをご覧ください!
各国の政治・経済の動向
インドネシア共和国
22年5%成長目標 ジョコ大統領が予算案提示
ジョコ大統領は国会で年次教書演説に臨み、新型コロナウイルスに打ち勝ち、 規制緩和などの構造改革を進める考えを示しました。
医療費を前年より 5 割増額する 2022 年予算案を国会に提示し、同年の GDP を前年比で 5~5.5%増やす目標を表明しました。
本予算案では、21 年予算案比1.4%減の 2,708 兆 7,000 億ルピア(約 20 兆 6,000 億 円)の歳出を計上しました。
同国政府はコロナ対策に伴う財政悪化を見込み、財政赤字のGDP 比を 3%以内に抑えるルールを 22 年まで凍結しています。
ジョコ大統領は 22 年の財政 赤字の GDP 比が 4.85%に達する見通しを示しましたが、23 年には予定通り 3%以内に戻す決意を強調しました。
また、構造改革を継続し新たな雇用創出、経済成長を目指すと共 に、再生可能エネルギーへの転換を進める考えを示しました。
4~6 月期は 7%成長 5 四半期ぶりプラス転換
政府は 2021 年 4~6 月期の GDP は、実質で前年同期に比べて 7.07%増えたと発表しました。
これは5 四半期ぶりにプラス転換です。
しかし、同国では 6 月中旬以降、 デルタ株の流入により、コロナの感染が急拡大しており、7~9 月期には再び数値の 悪化が見込まれています。
21 年通年で 3.7%~4.5%のプラス成長を見込まれています。
直近のインドネシアの主要ETFのiシェアーズMSCIインドネシアETFは以下のようになっています。
21年当初は、コロナ前の指標まで復活していたものの、コロナの感染拡大によって再び下降トレンドに入ってしまいました。今は、75週線をレジスタンスラインとして反発することができたので一安心です。
ただここ1年は、ずっと200週線よりも下位に位置しているので、少なくとも週足で上昇トレンドに転じた段階でエントリーするのが安全に思えます。
マレーシア
4~6月期は16.1%成長 通年見通しは引き下げ
中央銀行は 2021 年 4~6 月期の GDP が前年同期比で 16.1%増えたと発表しました。
前年の大幅な落ち込みの反動で 5 四半期ぶりにプラスに転じましたが、足元では新 型コロナウイルスの感染拡大で回復は鈍く、中央銀行は 21 年通年の成長率見通しを従来 のプラス 6~7.5%からプラス 3~4%に下方修正しました。
中央銀行総裁は、7~9 月期の成長 は鈍化するが、10~12 月期には好調な外需やコロナ拡大防止措置の緩和に伴って上 向くと説明しています。同国では、人口の約 50%が少なくとも 1 回のワクチン接種を受けてい る。
直近のマレーシアの主要ETFのiシェアーズマレーシアETFの週足チャートは以下のようになっています。
今週、大きく上昇に展示50,70週移動平均線にかなり近づいてきました。底値を固めて、上昇トレンドに転じてくれると期待が上がります。
フィリピン
ドゥテルテ大統領、22年予算案を提示 前年比11.5%増で過去最大
大統領府報道官の発表によれば、ドゥテルテ大統領は前年比 11.5%増で過去最大となる 5 兆 240 億ペソ(約 991 億ドル)の 22 年中央政府予算案を議会に提示予定のようです。
新型コロナ対策等の社会サービス部門に最大の 1 兆 9200 億ペソ、 インフラ事業等の経済サービス部門に 1 兆 4700 億ペソを充てる模様です。
4~6 期 GDP が 6 四半期ぶりにプラス転換、不透明感なお強く
同国の統計局は、21 年第 2 四半期(4~6 月期)GDP は前年同期比 11.8%と発表しました。
5 月からの新型コロナ対策の規制緩和が内需を下支えし、6 四半期ぶりに プラスに転じました。
一方、8 月は 2 週間の行動制限を実施しており、3,000 億ペソ(約 6,600 億円)の損失が見込まれるため、第 3 四半期以降、回復が維持するかは不透明です。
直近のフィリピンの主要ETFのiシェアーズMSCIフィリピンETFの週足チャートは以下のようになっています。
75週線をきれいに反発し、50週移動平均線もなんなくブレイクアウトしています。このまま出来高を伴って、200週移動平均線のブレイクアウトにチャレンジして欲しいですね。
タイ王国
中央銀行、政策金利を 0.50%に据え置き、今年の経済成長率予想を下方修正
中央銀行は、政策金利を過去最低の 0.50%に据え置きました。据え置き決定は 10 会合連続です。
また、今年の経済成長率 予測を、6 月時点の 1.8%から 0.7%に下方修正しました。
市場では中央銀行の更なる利下げ観測が出ていますが、中央銀行総裁は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた景気対策としては、追加利下げではなく企業への債務返済猶予や与信拡大を後押しする環境作りに専念する姿勢を示しました。
タイバーツ、2 年 9 カ月ぶり安値
8 月 12 日、外国為替市場で、タイバーツが対ドルで一時 1 ドル=33 バーツ台半ばとなり、18 年 10 月以来、約 2 年 9 カ月ぶりの安値をつけました。
新型コロナウイルスの 感染が拡大し、景気の先行き不透明感が強まっていることが背景のようです。
経済の柱である観 光業も回復が見通せず、バーツ安が長引く可能性もあります。
外国人投資家、株式を大きく売り越し
8 月 4 日、タイ証券取引所(SET)の取引で、外国人投資家は過去45 日間に 320 億バーツ(約 9 億 8,900 万ドル)を売り越しました。
新型コロナウイルス 感染拡大による業績への悪影響を見込んだ投資家心理の悪化が要因と考えられています。
経済の先行き不 透明感が高まる中、個人投資家の売買代金も減少しています。
直近のタイの主要ETFのiシェアーズMSCIタイETFの週足チャートは以下のようになっています。
こちらも、7月からの大幅から75週線をレジスタンスラインにしてきれいに反発しています。出来高も伴っているのでちゃんとした反発のようです。このまま出来高を維持して50週移動平均線、200週移動平均線のブレイクアウトできるかどうか、注視したいですね。8月末の動向に要注目です。
インド
中央銀行、政策金利の据え置きを決定、一方でインフレ予測を上方修正
中央銀行は、金融政策委員会において政策金利を過去最低の 4%に据え置きました。
昨年 5 月以降、7 会合連続の据え置き。今年度の消費者物価(CPI)上昇率の予測を 5.1%から 5.7%に上方修正しました。
足元 5 月、6 月の CPI は前年同月比 6%台と、 中銀の目標幅(2~6%)を超えており、市場では金融緩和の縮小時期が近いのではな いかとの見方が浮上しています。
直近のインドの主要ETFのヴァンエックベクターズインディアグロースリーダーズ(GLIN)の週足チャートは、以下のようになっています。
素晴らしい上昇トレンドのチャートになっています。200週移動平均線で一旦調整が入るかもしれないと思っていましたが、なんなくブレイクアウトし上昇を継続しています。一度調整が入って欲しいなぁと思うところですが、定期的に買い付けてトレンドフォローしていくのでチャートが崩れない限りは全く問題ないと思います。
メキシコ
コロナ禍で貧困率が悪化
政府統計が発表され、20 年末時点における同国政府基準による貧困率が 2018 年の約 42%から約 44%に悪化しました。
新型コロナウイルス感染流行に伴う大幅な 財政削減と企業閉鎖、レイオフによる経済低迷が事態を悪化させた要因と考えられています。
直近のメキシコの主要ETFのiシェアーズMSCIメキシコETF(EWW)の週足チャートは以下の通りです。
こちらも文句の付けようがない、安定した上昇トレンドが続いています。200週移動平均線もきれいにブレイクアウトしました。チャートが崩れない限りは、このトレンドに乗って大丈夫そうです。唯一の懸念は、若干出来高が細ってきている点でしょうか。
ブラジル
中銀、インフレが加速する中で政策金利を引き上げ
中央銀行は 4 日の金融政策決定会合で、政策金利を 1.00%引き上げて 5.25%にすると発 表しました。
利上げは 4 会合連続で、物価上昇が止まらない中、金融引き締めを加速させています。
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、6 月の消費者物価指数は年率 8.35% 上昇と、高水準で推移しています。
通貨安で輸入物価が高止まりしていることに加え、 世界的な食品価格の上昇や天候不順が影響しているようです。
直近のブラジル主要ETFのiシェアーズMSCIブラジルETF(EWZ)の週足チャートは、以下の通りです。
コロナ後の暴落からきれいに反発しています。特に50週移動平均線をレジスタンスラインとしながら調整を繰り返しながら上昇しています。先週もきれいに反発していたので、引き続き200週移動平均線をブレイクアウトするか、注目です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
新興国市場は上昇トレンドが継続していたり、レジスタンスラインできれいに反発するなど堅調な推移となっていた期間でした。
他方で、アフガンの政治動乱は非常に心配です。日本政府も現地のODA政府関係者の出国の支援を懸命に行なっていますし、国境なき医師団の現地派遣も始まりました。
私たち一人一人にできることは少ないかもしれませんが、関心を持ち続けること、現地の一般市民の方の生活支援や医療支援を行なっている団体を支援することも大きな行動なのではないかと思います。
かくいう私も、国境なき医師団の人たちが現地で少しでも良い環境で、一人でも多くの人を救えるように募金をしました。
https://www.msf.or.jp/