そもそもカーボンニュートラルって?
日本でカーボンニュートラルが話題になったきっかけ
日本でカーボンニュートラルが話題になったきっかけは、昨年8月に当時の安倍首相が辞任し、その公認として就任した菅首相の所信表明演説でした。首相の発言を紐解きながら、カーボンニュートラルの意味とそのタイムスケールを勉強していきましょう。
菅義偉首相
ここでキーワードとなっているのが、「温室効果ガス」です。日本が目指すカーボンニュートラルは、二酸化炭素だけでなく、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガス等までも含めています。
日本の温室効果ガス排出量
では、日本の温室効果ガスは一体どれくらいの量なのでしょうか。
日本政府の資料によると、年間約12.4億トンもの量を排出しています。そのうち、エネルギー期限CO2は約10億トンで温室効果ガスの約8割を占めています。
「排出を全体としてゼロにする」という意味
「排出を全体としてゼロにする」とは、一体どういう意味でしょうか。上の図の通り、日本の温室効果ガスのほとんどはエネルギー起源の二酸化炭素です。エネルギー起源二酸化炭素とは、ガスや火力発電のために必要な石炭および原油などの化石燃料から生じるものを指します。私たちが生活する上で電気やガスはなくてはならないものなので、「排出量そのものをゼロ」にするということは、容易ではありません。「全体としてゼロ」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計がゼロになる」ということを意味します。
一番確実なのは、「排出量削減」なのですが、これをゼロにすることは難しいため排出分を埋め合わせするために吸収や除去を行う必要があります。具体的な方法は、植林を行って光合成に使われる大気中のCO2の吸収量を増やすことや、CO2を貯留するCCSという技術を利用、「DSCCS」や「BECCS」といった、大気中に存在する二酸化炭素を回収して貯留する願えミッション技術の活用も考えられています。
CCS:排出されたCO2を、他の機体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するもの。
DACCS:大気中にすでに存在するCO2を直接回収して貯留する技術
BBCCS:バイオマス燃料の使用時に排出されたCO2を回収して地中に貯留する技術
なぜ、2050年までにカーボンニュートラルが必要なのか?
カーボンニュートラル達成の目標年が2050年になっている背景には、2020年に運用を開始した気候変動問題にかんする国際的な枠組みの「パリ協定」があります。
パリ協定では、「今世紀後半のカーボンニュートラルを実現」するために、加盟国が温室効果ガスの排出削減に取り組むことが目的として定められています。
どれくらいの国がカーボンニュートラルを表明している?
では、今回菅首相が宣言したように2050年カーボンニュートラル達成を宣言している国は世界で何カ国あるのでしょうか。
21年1月時点では、日本を含む124カ国がカーボンニュートラル実現を表明しています。
これらの国の、世界全体のCO2排出量に占める割合は、37.7%と推定されています。そして、このカーボンニュートラルの動きは、国だけでなく企業においても加速しています。
各国のカーボンニュートラルの取り組み
一言に、「カーボンニュートラル」といっても、その目標や取り組みは国ごとに異なってきます。
各国ともに気候変動対策と経済政策を両立できるような持続的な成長戦略を進めようとしていることが伺えます。少しずつアピールしているところが異なってきていて、その国の内情や他の政策が関連してきていることを考察するのは面白いです。
今回は新たな債券が発行される中国のカーボンニュートラルに注目してみましょう。
中国のカーボンニュートラル債券
債券の概要
中国の政策金融機関である国家開発銀行は3月18日、二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」関連の資金調達を目的とした「グリーンボンド(環境債)」を発行することを発表しました。200億元(約3,350億円)規模の調達を見込まれています。
カーボンニュートラルに使途を限定した環境債として、中国で初めて国際NPOの気候債券イニシアチブ(CBI)から認証を受けている点が注目です。調達資金は国内外の環境基準を満たす風力発電や太陽光発電などのプロジェクトに用いられる予定となっています。
また、2月に中国の電力会社など6社が同国初となる「カーボンニュートラル(炭素中立)債」の発行を行いました。今回の債券発行を通じて調達された資金は、いずれも建設期間が2年以上の中長期プロジェクトに投資される予定になってます。そのすべてが二酸化炭素(CO2)の排出削減を主眼とするもので、4件の風力発電、4件の水力発電、2件の太陽光発電、1件のグリーン建築のプロジェクトが対象に含まれています。
今回のカーボンニュートラル債は、環境改善事業の資金調達を目的にする「グリーンボンド」の一種であり、募集資金の用途をCO2排出の削減効果があるプロジェクトに絞り込んでいるのが特徴だ。CO2削減の目標や達成度などの情報をきちんと投資家に開示する必要があり、投資効果について「計算できる」「調べられる」「検証できる」ことが求められています。
そして中国初のカーボンニュートラル債にも、その仕組みが導入された。投資先のプロジェクトについて、第三者の専門機関がCO2削減を含む環境効果を定量的に測定し、アセスメント・レポートを作成、債券の償還期間中は半年毎にCO2削減効果の関連情報を開示し、資金利用の透明性を高めるとしています。
市場の評価
今回のカーボンニュートラル債券の市場の評価はどうだったのでしょうか。結論からいうと、あまり高い評価は得られなかったようです。
2月発行の債券は、旧正月前というタイミングと重なったのもあるかもしれませんが、募集期間が延長されました。そして、中国のグリーン債券全般の課題とも言えるのですが、流動性が非常に低い、デフォルト(債務不履行)に対する保証もないために投資商品としての魅力が低い、ということが結構致命的なのではないかと思っています。政府が本当にカーボンニュートラルをやる機であれば、世界中からの投資資金を呼び込むためにあらゆる手段を使って、投資商品としての魅力を高めることが必要になってくるはずなのですが、まだその様子はみられません。
債券発行の背景
習近平国家主席は昨年、CO2排出量を30年までにピークアウトさせ、60年までに脱炭素社会の実現を目指すことを国連で表明しました。同行は今回の起債について「政策金融機関として同目標に向けた国の取り組みを積極的に支える重要な措置」と位置付けられています。
んん?
なんだか、「国のトップが、高らかにスケールの大きい目標を掲げ、その後具体的な施策が出てくる」この流れは今回の日本の菅首相の流れと非常ににていますね笑
日本においては、まだカーボンニュートラルの具体的な背作は出てきていないですが、おそらく2021年にも具体的な政策や、ひょっとすると日本版カーボンニュートラル債が出てくるかもしれませんね。
まとめ
今回のまとめ
- 世界各国で、パリ協定の枠組みの中で2050年カーボンニュートラルの動きが加速している。
- 中国のカーボンニュートラル債は、国際的なグリーンボンドの認証は受けているものの、投資商品としての魅力は高くなく、市場からの評価もそれほど高くなかった。
- 今後は、中国がさらに魅力的な債券を市場に発行できるか、カーボンニュートラル政策を持続的に継続できるか要チェック。
- 投資家が、満足でき「計算できる」「調べられる」「検証できる」透明性のあるレポーティングを行えるか。
今後は、先進国のみならず中国をはじめとする新興国も資金使途を明確にした債券発行がどんどん加速するのではないかと思います。投資家の意識も徐々に資産形成だけではなく、その投資効果にも注目されるようになってきています。
自分たちが投資したお金が一体どのように使われているのかきちんと確認する、ということもよりよい投資家に成長していくための大切なステップだと思います。そんなことに役立てるようにこれからもブログ更新頑張ろうと思います。