市場動向/新興国投資

21年8月下旬の新興国市場動向の振り返り

かずお

今回は、8月下旬の途上国を中心とした主な国際的なニュースと各国の動向を取り上げたいと思います!ジャクソンホールや最新の雇用統計を受けて、9月の相場もどのようになるのか、とても気になっています。他方で、コロナの影響で極度の貧困層がアジアで8,000万人増加しているとの報告もあり、経済格差がどんどん広がっているのもとても心配です。

こんな方におすすめ!

  • 市場に関係する主要な世界のニュースを振り返りたい
  • 世界的なマクロ経済に関する最新の情報を知りたい
  • 新興国市場や各国の動向を確認したい
  • 主要な新興国ETFの指標を確認したい

国際政治・世界経済の主な動向

アジア開発銀行 新型コロナによりアジア大洋州地域の極度の貧困が 75-80 百万人増と推計

8 月 24 日、アジア開発銀行は 2021 年版「アジア・大洋州地域主要指標」を公表し、新型コ ロナ感染症拡大により、極度の貧困(1 日辺り所得が 1.9 ドル以下)人口が 75~80 百 万人増加したと推計しています。

アジアの開発途上国における極度の貧困人口は 2017 年に 203 百万人(5.2%)でしたが、パンデミックがなかった場合は 2020 年 までに 2.6%まで減少していたと推計しています。

アジア経済の成長により、世界全体の GDP に占める比率は 2019 年に35%まで拡大しましたが、20 年には移動制限で労働時間の8%が失われてインフォーマルセクターの貧困世帯に大きな影響を与え、プラス成長を示したのは全体の 4 分の 1 の国に留まりました。

https://www.adb.org/ja/news/covid-19-threatens-asia-and-pacific-progress-sdg-adb-data-show

米 FRB 議長、年内に量的緩和縮小の意向。途上国の通貨安・インフレ圧力の可能性

8 月 27 日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、カンザスシティー連銀主催の毎夏恒例の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)において、2020 年 3 月より開始している量的緩和の縮小(テーパリング)は、年内開始が適当との見解を示した。

一方で、直近のリスクとしてデルタ株による新型コロナウイルス感染拡大が 経済の先行きに影を落とす中、完全な回復を達成するまでは経済支援を継続する意向を示し、テーパリングが利上げには直結しないと説明しました。

今回の発言を受けて米国市場では、株価上昇・金利低下はあったものの比較的落ち着いた反応でした。

一方、 今後、米国の金融引き締めへの観測が高まる中、米ドルが上昇し新興国通貨安が進み、 それが新興途上各国でのインフレ圧力を強める可能性があります。

既に先進国・途上国を 問わず一部の国々は、インフレを抑制するために金融引き締めに舵を切りつつある状況です。

(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/451848

各国の政治・経済の動向

インドネシア共和国

中央銀行、政策金利を 3.50%に据え置き

8 月 19 日、中央銀行は、政策金利の7日物リバースレポ金利を過去最低の 3.50%に据え置きました。

今後、新型コロナウイルス危機からの景気回復を下支えしつつ外部の金融環境等に応じて通貨ルピアの減価圧力にも対処していく金融政策運営を迫られる可能性があります。

直近のインドネシアの主要ETFのiシェアーズMSCIインドネシアETFは以下のようになっています。

iシェアーズMSCIインドネシアETF(週足)

21年当初は、コロナ前の指標まで復活していたものの、コロナの感染拡大によって再び下降トレンドに入ってしまいました。今は、75週線をレジスタンスラインとして反発することができたので一安心です。

ただここ1年は、ずっと200週線よりも下位に位置しているので、心配な方は200週線をブレイクアウトするのを確認するまでエントリーを待ってもいいかもしれません。

フィリピン

21 年 GDP 成長率予測、4~5%に下方修正

8 月 18 日、フィリピン政府は、21 年の GDP 成長率予測を従来の 6~7%から 4~5%へ下方修正しました。

GDP の多くを個人消費が占めるため、新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限の影響で消費活動が停滞することなどを反映した結果のようです。

21 年 4 月~6 月期の GDP 成長率は 6 四半期ぶりにプラスに転じましたが、感染力の強いインド型の感染が広 がっており、7~9 月期以降の経済停滞には警戒が必要です。

直近のフィリピンの主要ETFのiシェアーズMSCIフィリピンETFの週足チャートは以下のようになっています。

iシェアーズMSCIフィリピンETF(週足)

75週線をきれいに反発し、50週移動平均線もなんなくブレイクアウトしています。このまま出来高を伴って、200週移動平均線のブレイクアウトにチャレンジして欲しいですね。
この1年間は、これまで200週移動平均線のブレイクに挑戦していずれも跳ね返されているので今回、抜けれるか楽しみです。

タイ王国

失業率が 12 年ぶりの水準に上昇

21 年 1~3 月期の失業率は 1.96%まで上昇しました。これは 12 年ぶりの高水準。

新型コロナの流行前は0%台後半であり、4~6 月期分につい ては一段の上昇が見込まれています。

失業率が 2%台に達すれば、世界が金融危機の 09 年 1~3 月期以来となります。

一見、他国に比べて低いようにみえますが、タイの場合は「1週間の就労が 1 時間未満の求職者」が失業者の定義のためちょっとでも働いている人は就労者とみなされ、求職していない人はカウントされないので、失業率の数値は実態よりも低いです。

直近のタイの主要ETFのiシェアーズMSCIタイETFの週足チャートは以下のようになっています。

iシェアーズMSCIタイETF(週足)

こちらも、7月からの大幅から75週線をレジスタンスラインにしてきれいに反発しています。出来高も伴っているのでちゃんとした反発のようです。このまま出来高を維持して50週移動平均線、200週移動平均線のブレイクアウトできるかどうか、注視したいですね。9月の動向に要注目です。

ベトナム

世界銀行、コロナ影響を受け 21 年の経済成長見通しを下方修正

世界銀行は、 21 年のベトナムの経済成長率見通しを6.8%から 4.8%に下方修正しました。

足元、新型コロナの感染者数が拡大し、行動制約が強化されていることなどを反映した結果です。

新型コロナの影響が徐々に収まり、10~12 月には経済が持ち直すとの前提で、22 年の成長率予測は 6.5%を維持しています。

短期的なリスク要因としてワクチン接種の遅れや貿易相手国の経済動向を指摘しています。

ベトナムでは、南部を中心に新型コロ ナ感染の第 4 波の勢いが衰えず、ホーチミン市では今月 23 日より社会的隔離措置を 厳格化し、9 月 6 日まで事実上の外出禁止措置が講じられています。

直近のベトナム主要ETFのバンエックベトナムETFの週足チャートは以下のようになっています。

バンエックベトナムETF(週足チャート)

2020年4月を底値に綺麗な上昇トレンドを継続しています。足元の経済指標やコロナの感染拡大は予断を許さないですが、トレンドが崩れない限りはホールドで問題なさそうです。

インド

4~6 月期 GDP は前年同期比 20.1%の伸び、コロナ感染第 2 波でも高成長

8 月 31 日、インド政府は、4~6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比 20.1%増になったと発表しました。

20 年 4~6 月期 GDP は、新型コロナウイルス感染第 1 波による全国規模の都市封鎖措置等の影響を受けて前年同期比▲24.4%と過去最大の落ち込みを記録してましたが、今回はその反動で増加する結果となりました。

この間、新型コロナウイルス感染の第 2 波に見舞われましたが、第1波ほどの厳しい封鎖措置は取られず、製造業や個人消費が成長をけん引し、 GDP の大きな伸びに繋がりました。

この先の見通しについては、コロナのデルタ変異株の感染が急増していること一部の州でのワクチン接種の進展が遅いことなど、成長が鈍化する可能性が指摘されています。

中央銀行は、4 月から開始した 21/22 年度の GDP 成長率は前年度比 9.5%増と前年度の▲7.3%から回復することを予測していますが、同時にコロナ感染の第 3 波が起きる可能性を警告しています。

直近のインドの主要ETFのヴァンエックベクターズインディアグロースリーダーズ(GLIN)の週足チャートは、以下のようになっています。

ヴァンエックベクターズインディアグロースリーダーズ(GLIN)週足チャート

素晴らしい上昇トレンドのチャートになっています。200週移動平均線で一旦調整が入るかもしれないと思っていましたが、なんなくブレイクアウトし上昇を継続しています。一度調整が入って欲しいなぁと思うところですが、定期的に買い付けてトレンドフォローしていくのでチャートが崩れない限りは全く問題ないと思います。

南アフリカ

21 年 GDP 成長率が暴動により 0.7~0.9%押し下げとの見通し

財務省は、7 月に発生した暴動により、21 年のGDP 成長率は 0.7~ 0.9%押し下げられる見通しを示し、暴動が雇用や市場心理に影響を与える可能性 を織り込んだ結果によるものです。

24 日に統計局が発表した第 2 四半期の失業率は、コロナにより 34.4% (同年第 1 四半期は 32.6%)と 08 年の調査開始以来過去最悪。

第 3 四半期では暴動の影響も加わりさらに悪化する可能性がある。

直近の南アフリカの主要ETFのiシェアーズMSCI南アフリカETFの週足チャートは以下の通りです。

iシェアーズMSCI南アフリカETF(週足チャート)

2020年からの堅調な上昇トレンドを維持して、コロナ前までの水準にほぼ戻していますが、直近は50週移動平均戦も割り込み押し目を形成しています。このまま、下値の切り上げで上昇トレンドを継続するかどうかがテクニカル的には注目されます。トレンドの維持の材料として、治安の安定化や経済の持ち直しなどがあるといいのですが。。。

トルコ

第 2 四半期 GDP は前年同期比 21.7%増。コロナ禍での反動で過去 20 年最大の伸び

9月1日、統計局は、21年第2四半期(4-6月)のGDP成長率が前年同期比21.7% 増となったと発表しました。

新型コロナウイルス禍の直撃を受けた 20 年第 2 四半期(同▲ 10.8%)からの反動で輸出や消費等が大幅に伸び、過去20年で最大の伸びとなった。

21 年全体のGDP成長率は 8%以上まで高まるとみられています。

経済指標は回復基調ですが、足元ではインフレが加速(21 年 7 月:前年同月比 18.95%)しており、成長を優先するエルドアン大統領の意向を受けた中銀による拙速な利下げへの懸念もくすぶっています。

直近のトルコ主要ETFのiシェアーズMSCIトルコETFの週足チャートは、以下の通りです。

iシェアーズMSCIトルコETF(週足)

非常にボラティリティが激しいチャートのなっています。インフレ率も19%近くって、日本じゃ考えられないですよね。。
トルコは、金融政策も大統領の意向が強く反映されるため、必ずしもマクロ経済的に望ましい展開にならないこともあるので、一旦はマクロ経済指標の観察とチャートでトレンドがはっきりするまで何もしない方がいいかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
新興国市場は上昇トレンドが継続していたり、レジスタンスラインできれいに反発するなど堅調な推移となっていた期間でした。

デルタ株の感染拡大は、世界経済の共通の不安材料になっていますが、インドやベトナムのETFは上昇トレンドを堅調に維持しています。現状は、新興国の中でも経済が持ち直してきている国とそうでない国の明暗がはっきりと分かれてきています。

新興国投資をこのタイミングで行う場合は、どの国に投資するべきかを各指標をきちんと比較して行うことがリスク低減につながると思います。

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