市場動向/新興国投資

21年7月前半の新興市場動向の振り返り

かずお
2021年もあと半年!先進国では、ワクチン接種が進み経済の回復が進んでいますが、新興国の経済は依然として厳しい見通しのようです。今後は景気回復の二極化が一層と顕著になるかもしれません。

個別国の政治・経済状況

マレーシア:成長率予測の下方修正相次ぐ

財務相は今年の政府の GDP 成長率予測を現行の 6.0~7.5%から下方修正する必要があると発言しました。

ロックダウンの影響によるものだとし、8 月半ばに第 2 四 半期(4~6 月)の GDP 統計を発表する際に、新たな通年予測を公表する予定です。

既に、 世界銀行が 6.0%から 4.5%に、S&P が 6.2%から 4.1%に 2021 年の成長率予測を引き下げ ていて、これを容認する形となりました。

S&P は、マレーシアを含めたアジアの新興国で新型コロナワクチンの接種が 遅れていることを下振れリスクに挙げています。

フィリピン:中銀、5会合連続で金利据え置き 下振れリスク残る

同国中央銀行は、政策金利の翌日物リバースレポ金利を過去最低の 2.0%に据え置きました。

一部地域で新型コロナウイルス流行に伴う制限が強まる中、成長の下振れリ スクが残っているためです。

緩和的な金融政策を維持し、景気回復を支援する姿勢です。

金利の据え置きは 今回で5 会合連続です。一貫した金融政策を実施していることは高く評価できるのではないでしょうか。

米連邦準備理事会(FRB)の早期引き締めシグナルがでているものの、必要な限り経済支援を引き続継続する強い意志が見られました。

ミャンマー:通信会社幹部の出国を制限

ミャンマーの通信当局が、外国人を含む通信会社の幹部が当局の許可なく出国することを禁じる指示を出しているようです。

当局は通信傍受のための新システムの導入を通信会社に求めており、実現に向けて圧力をかける狙いがあると推測されています。

ミャンマーの携帯通信事業は 4 社ありますが、その内、ノルウェー通信大手テレノールが、事業環境の悪化を理由に、ミャンマーの携帯通信事業の売却を検討し ていると報じられています。

アジアの最後の夜明けとまで称されたミャンマーの民主化は、風前んの灯火になっています。今は、ただ市民の安全な暮らしが行えるように祈るばかりです。

こういった時に、国際社会や我々投資家は一体どのような行動を行えばいいのでしょうか。

なかなか答えを見つけることは難しいですが、関心を持ち続けること、この出来事を忘れないことがまずは大切なのだと思います。

ミャンマー:米国が追加制裁、経済閣僚や中国企業も対象

米財務省外国資産管理室(OFAC)は、国軍が統制するミャンマー政府に対し追加の経済制裁を発表しました。

国軍の最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」 が任命した経済閣僚ら 22 人のほか、国軍に銅山採掘を通じて資金供与しているとし て中国系企業も対象に加えました。

タイ :中銀、政策金利を 0.50%に据え置き、成長率予想は引き下げ

同国中央銀行は、政策金利を過去最低の 0.50%に据え置くことを決定しました。

決定は全会一致となり、9 会合連続の金利据え置きとなります。

コロナの財政支援の方針が一貫していますね。国際社会からも高評価を受けるのではないでしょうか。

一方で、新型コロナウイルスの感染第 3 波に見舞われる中、残念あがら21 年の経済成長率予想を前回予想 3.0%から 1.8%に引き下げられました。

また 月月例経済報告書では、新型コロナウイルス感染症の流行第 3 波による経済への影響がより顕著になったと公表しました

民間消費、民間投資とも前月から 低下が続いており、渡航制限の影響から外国人旅行者の低迷も続いている影響も大き いと指摘しています。

このような中、家計債務は 3 月末時点で 14 兆 1,000 億バーツ(4,390 億 ドル)となり、対国内総生産(GDP)比 90.5%に達し、03 年以降で最高の水準になっています。

世界的にも有名な観光大国のタイ。みんなが旅行に行けるのは一体いつになるのでしょうか。。

中国:グリーンボンドの発行がアジア最大に

アジアでグリーンボンド(環境債)の発行が大幅に増えています。

環境債とは、二酸化炭素排出削減等の環境問題を解決するプロジェクトに資金使 途が限定された債券です。

中国においては、 年初から 5 月 27 日までの環境債の発行額は 261 億ドル(全体の 13.4%)アジアでトップで、前年同期のほぼ 3 倍。

この 2 月には、水力発電や洋上風力発電プロジェクト、空港整備プロジェクトを行う企業による大型発行(64 億元=10 憶ドル)の事例が確認されています。

アジアで発行額が増えている背景は、各国・地域が温暖化ガス排出の実質ゼ ロなど、気候変動対策として明確な実現目標を表明し始めたことに加えて、欧州と異なり、環境債の価格を同条件の債券よりも高める(利回りは低い)プレミアムがない ことがあります。

中国は世界最大の CO2 排出国であり、60年までにカーボン・ニュートラル(排出量 実質ゼロ)を達成する目標を掲げています。

中国:今年前半の社債不履行は過去最大

中国で、社債のデフォルト(債務不履行)が増加しているようです。

21 年 1~6 月のデフ ォルト額は約 1,160 億元(約 180 億ドル)と上期としては過去最高を記録しました。

中央や地方政府が支援する「暗黙の政府保証」を受けてきた国有企業のデフォルトが増えているようです。

19年に起きたデフォルト総数に占める国有企業の割合は1割強でしたが、20 年にはほぼ半分に急増し、21 年は約 4 割を占めています。

社債償還は今後ピークを迎え、21~23 年の償還総額は、18~20 年の 1.6 倍の 2 兆 1,400 億ドルに達する見込みです。

ということは、今後もどんどんデフォルトは増えてくるかもしません。心配です。。

メキシコ:2 年半ぶり利上げ

同国中央銀行は、政策金利を 25bps 引き上げて 4.25%にすると発表しました。

利上げは 18 年 12 月以来、2 年半ぶりです。

5 月のインフレ率が前年同月比 5.89%と中銀目標上限の 4%を 3 ヶ月連続で上回り、インフレの加速に対応した形となりました。

同国では 19 年から金融緩和 局面が続いてきており、21年2月では利下げを実施していました。

中銀が6月1日に公表 した調査では、21 年の実質 GDP 成長率予想は 5.16%と、米景気回復の恩恵で輸出は堅調に推移しており、利上げの影響は注視が必要です。

トルコ共和国:利下げ予想修正  6月の物価上振れで

統計局が発表した 6 月の CPI (消費者物価指数)は前年比 17.53%上昇で 2 年ぶりの高い伸びを記録しています。

新型コロナウイルスの新規感染者数が減少したことを受けて、6 月に厳格なロックダウンを緩和したことも影響しているようです。

この結果により、大統領が望む夏季の利下げは、実施される可能性が低下したと見られています。

中銀総裁は金融緩和を拙速に進めるのではないかとの投資家の懸念払しょくに努め、主要政策金利の水準をインフレよりも高い水準に保つと明言しています。

過去 3 回の金融政策決定会合では金利を 19%に据え置いていますが、7月14日の会合ではどのような決定がなされるのか、要チェックです。

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