本を手に取ったきっかけ
ここ数年で、アメリカと中国の外交、経済的な対立が激しさを増し「米中対立」という言葉をよく耳にするようになりました。
多くの方のお仕事や資産形成にも影響が出てくるのではないでしょうか。かくいう私も、仕事の関係で中国の途上国への外交政策(一帯一路構想)などは、興味を持っています。その大枠を把握する上でも3つのことが気になっていました。
- 現在世界を席巻しているアメリカと中国の外交の歴史はどのようなものなのか?
- アメリカの中国に対する考え方がどのように変わってきたのか?
- 米中外交政策における日本の位置付けと今後の役割はどのようなものなのか?
今回紹介する本は、著者の渡邉恒雄さんが会社に講演に来てくれたことことがきっかけで知ることになりました。その講演が本当に分かりやすく、勉強になたのでその後の自己学習ということで今回読んで見ました。
著者紹介
渡部 恒雄
(引用元:日本財団HP)
1963年生まれ。笹川平和財団上席研究員。
1988年東北大学歯学部卒業。
1995年米国ニュースクール大学で政治学修士課程修了。同年、戦略国際問題研究所(CSIS)に入所し、2003年上級研究員。2005年帰国、
三井物産戦略研究所、東京財団を経て現職。著書に『2025年米中逆転』など。
こんな人におすすめ!
- 米中関係の概要が知りたい
- アメリカの対中外交政策歴史が知りたい
- これからの米中関係がどうなるのか知りたい
- 米中対立における、日本の位置付けや役割が知りたい
本書の構成
この本の構成は、主に以下の4つのパートに分かれて書かれています。
- 米中関係のエッセンス〜アメリカの「対中姿勢」の見取り図
- 明治時代からオバマ政権に至るまでのアメリカの対中政策の変遷
- 2025年の米中関係の考察〜米国と中国の関係はどうなるのか?〜
- 日本の戦略〜米中本流に流されないために日本はどうすれば良いか?〜
超要約
米国の対中政策が一貫したものではなく、大統領選挙や国内世論、世界情勢に左右されながら紆余曲折を経ながら現在に至ることがとてもよくわかる内容になっています。
米国における対中政策の決定要因
米国における対中関与政策の決定要因はざっくりまとめると3つ。
- 「関与(engagement)」外交・経済関係の構築と維持」
- 「バランス(Balancing)」勢力均衡
各国軍艦の軍事力に一定の等質性を与えることにより、突出した脅威が生み出されることを抑制し、地域不安や紛争の誘因を低下させること。第二次世界大戦前は日本、冷戦時はソ連を念頭に、アメリカにとって脅威になりうる国と同等の軍事力を中国に与えることで安定化を図りました。 - 「ヘッジ策(hedging)」最悪の場合に備えた保険
これらの要因の割合がその時の政権や情勢によって左右されながら政策が決定されてきています。
中国の強かな対米外交
この本では、1800年代からオバマ政権までの米中外交に関連した歴史が説明されているのですが、いかに中国の巧みな外交手法によって米国から様々な譲歩を引き出していることが分かりやすく説明されています。
中国がまだ国民党と共産党に分かれていた頃から米国とのコミュニケーション・チャネルを構築しており、(米国の意向もあるのはもちろんですが)朝鮮戦争後の米中断絶時期においても、チャネル再開の様々な努力が講じられており、そして今日に至るまで常にトップ同士で最終決着できるような関係を維持しています。
このような関係は日本の対米外交とは一線を画すところがあります。日本の外交政策は、吉田茂、田中角栄、中曽根康弘以外の時代は官僚機構に依存した対米外交がとらてきているのに対して、米中は常にトップ同士の外交が行われています。
2025年米中逆転!? そして日本の役割
今後はこれまで米国が有していた圧倒的な経済・軍事的優位性が減少し、バランスが中国側に大きく傾いていくことは間違いないでしょう。
このような壮大な地政学的な変化に日本はどのように対応していけばいいか。この本に明確な提案は示されていないが、身につまされる読者や日本への問いが印象的でした。
「中国は、このまま社会主義を継続した方がいいのか。民主化した方がいいのか。この問いにどれだけ有益な提言をできるだろうか。」
日本は、第二次世界大戦後に民主化を達成し経済成長を成し遂げました。
これに続いて、韓国、台湾、インドネシアと東アジア諸国は、経済成長の後に民主化がついてきています。
では、なぜ中国ではこれが当てはまらないのか。
世界の多くは、文化も同じ中国もこれと同じ変化があったもおかしくないと考えていますが、実際はすでに中国は米国からの民主化要求を跳ね返すだけの経済力と軍事力を持っています。
これからは、まさに米中が「民主化」をテーマに新しいステージに進んでいくことになります。
そんななか、日本のリーダー、そして私たちは、民主化と人権をめぐる西洋と東洋の歴史を十分に学んでしょうか。
本来ならば、このような課題は、非西洋の先進民主主主義国である日本こそがリードできる分野のはずですが、そこがでまだまだ不十分なのではないでしょうか。
経済にも軍事にも遠いテーマではあるものの、根源的な部分で日本が米中関係に最も影響を与えることができる重要な分野になるはずだと思います。
日本が米中の流れに翻弄されないためには、日本国内の政治を安定させ、戦略性を持ったリーダーや人材の育成と、それを支援する体制の構築が必要です。
そして、すでに少子高齢化を迎えている日本は、「課題先進国」として中国もいずれ迎える高齢化社会に備えるようにメッセージを今から送ることはできないでしょうか。
現在の中国が軍拡に使っているコストを将来のリスクに備えた社会保障のコストに回せるように日本が影響を与えるようなことができれば、日本のプレゼンスはきっと上がるでしょうし、安全保障面も緊張緩和につながるのではないかと思います。
終わりに
いかがでしたか?
私自身、今回人生で初めて自分で読んだ本をブログに書いて見ました。最初から少し難しすぎる本を選んでしまったと少し後悔しています。
ただ、書かれている内容はとても勉強になり、毎日のニュースや新聞が楽しみになるような内容でした。いつも、アメリカのニュースも中国のニュースも日本を中心にアメリカはアメリカ、中国は中国で捉えていましたが、この本では主にアメリカと中国が主眼に置かれて書かれていたので、とても新鮮な視点で読むことができました。
次回以降はもう少し簡単な本を読んでみようと思います。
興味のある方は、ぜひ一度読んでみてください!